ピアコーチングが注目される理由

一般的な「コーチング」とは、相手の可能性を信じる姿勢で会話や質問を通じクライアントの自発性を促して、新たな気づきや目標達成のためのヒントを発見させることで、自ら行動に移す動機づけをさせるコミュニケーション手法のことです。

そのためコーチ側から方法や回答をクライアントに教えることはなく、クライアント自身が答えを引き出しながら、課題改善へのコミュニケーションを繰り返していきます。その過程で思考の柔軟性も身につきますので、今まで思いつかなかった考えが浮かんだり、それを実際に行動に移すことでクライアント自身の成長を感じてもらいモチベーションの向上も期待ができます。

「ピア」とは英語のpeerで、仲間・同輩を意味する言葉です。上下関係のないフラットな立ち位置の仲間や同僚どうしで、横の1対1で目標達成に向けて、様々な質問や回答が生まれて新たな気づきや行動に繋がり、互いを信頼し合う関係性の構築に発展していきます。従来の「コーチング」では、専門知識を有した者が必要になるため、導入への敷居の高さがありましたが、「ピアコーチング」は横のつながりで気軽に始められるので、導入までの敷居が高くないのも特徴です。

「ピアコーチング」では、ある程度のルールを理解した仲間どうしで始められますので、導入もしやすく、実際に「ピアコーチング」を体験しながら、コミュニケーション力の向上やコーチングスキルの習得など、自己評価が格段に上がるのも注目される理由です。

「ピアコーチング」が求められる背景

ビジネスにおいて、これまで多くの企業では、上司と部下の上下関係の中で仕事のやり方や考え方などを教える「ティーチング」が主流でした。しかし上司が知っていることを部下に教えてそれを実践させるだけでは、グローバル化が進行し移り変わりの早いビジネス環境では柔軟な適応ができなくなりました。

そこで教育主体のOJTなどから、自ら考え行動する人材をつくる「コーチング」や「ピアコーチング」を導入する企業様が増えてきました。管理職も部下1人あたりにかける時間を削減しながら、部下との連携やコミュニケーションの活性化など図ることができますので、双方にとって得られるのもが多いのもコーチング・ピアコーチングが支持されやすい理由です。

ピアコーチングの優位性

「ピアコーチング」は、コーチングの基本ルールはそのままですが、仲間や同僚どうしの横の関係性の中で、コーチをする人とコーチングを受ける人に分かれて、フラットな視点でコミュニケーションを重ねてつながりを深めます。役割を入れ替えたり、人を変えて個々の目標達成に向けて共に進んでいきます。仲間どうしでできるのでコーチングを学びたいという人にも「ピアコーチング」は最適です。

「ピアコーチング」を初導入する際は、3名程度の小グループを複数作って、グループ間どうしで行うと会話が途切れずにスムーズにコミュニケーションが行なえます。グループになるとそれぞれの人間性を理解しやすくなり信頼性が向上します。そのような信頼できる仲間同士でナレッジを共有したり、同じ目標に向かって様々なアイデアや行動プランが出てくるなどチームパフォーマンスの向上も期待できます。そしてコミュニケーションスキルやコーチングスキルが身についてきたら、本来の1対1でコーチングを行うことも容易になります。

ピアコーチング導入のポイント

① 組織内の教育風土

 社員の教育を、OJTに頼った教育風土ではすでに限界がきており、個人が学ぶ意欲と行動力を高めて、様々な変化に対応できる人材を増やせる組織内の教育風土をつくる必要があります。そのためには社員が必然的に学びを深め続けられる教育風土が必要です。それは自己啓発を支援する制度や、個人成長と成果を評価するプログラムであっても社員がそれを必要する動機を持たなければ意味がありません。個人が取り組む学習の習慣、企業が目指す教育の風土の両方の視点から組織内でどのように教育に取り組むのか、企業、社員が一丸となって成長していく教育文化を成熟させていく必要があります。

② 学ぶ動機づくり

 一般的にどの企業でも社員は自分の業務を持っており、その業務をこなすだけで手一杯です。そこに自己啓発を促しても「なぜ学ぶのか?」「学ぶ時間がない」など否定的な意見を聞くこともしばしばです。人は変化を本能的に嫌います。それは成長意欲がない訳ではなく、現状、手一杯な状況の中でこれ以上の負荷を自分に与えるのは危険だと思ったり、未知の事をすることに対する抵抗です。これを心理学ではホメオスタシス(現状維持機能)と言います。これは誰でも持っている本能的なことなので避けることはできません。それを踏まえてどのように「学ぶ動機づくり」をしていくのかと言いますと、自然と学びが得られる環境をつくることが重要なのです。

③ 運用・管理・コスト

 実際に導入検討する際に最も気になるのが「運用」「管理」「コスト」になります。コーチングルールの徹底、コーチ役の条件、コーチ役の教育、相談する人を集う方法、話のテーマ、1回あたりの時間など、運用する上で事前に決めることはたくさんあります。また運用をサポート・管理する組織も必要になります。人選とマッチング、ヒアリングやアンケートの実施、効果検証などです。そしてコスト面は、いきなり費用対効果や業績向上に結び付けず、予算を決めてスモールスタートで開始するのをおすすめしています。

活用事例

◆要約
・企業:映像制作会社
・状況:業務以外に話し合うことがなく意思疎通も図れていない
・目的:ナレッジ共有とスキルアップが図れる仕組みを導入したい
・施策:コーチング、ピアコーチングの実施
・成果:共に困難を乗り越える組織力と信頼関係の構築ができた

◆導入背景
リーダー1人に対して部下が5名程度のユニット的な組織構成となっており、リーダー自身もプレイングマネジャーとして制作業務を担当。ほぼ全員でパートを分けて制作作業を進めている状況でした。ミーティングはスケジュールや進捗確認がメインでナレッジ共有までは行われておらず、業務以外でのコミュニケーションがほぼない状態

◆課題
・日々の業務に忙殺されて個人目標に手が回らない
・スキルアップしようにも勉強する時間がない
・メンバー内の課題共有や改善が全然できない
・横のつながりが無いので組織としての集合意識が希薄
・報告、連絡、相談が殆どなく個々の作業に閉じた組織である

◆ピアコーチングの実施
最初は私がリーダーと対話し、コーチングの基本原則やルールをお伝えしてどのように部下を目的地に導くかをコーチングするところから始めました。まず、日常の中で自問自答するセルフコーチングを2カ月ほど実施してもらいながら、時に私からもアドバイスをしてコーチングの感覚を養ってもらいました。
次に、6名の部下を気の合う3名ずつに分けて2グループ作成し、各グループで1日30分ほど話をする時間を設けてもらいました。内容は雑談でもOKとし、会話することに慣れてくると雑談から業務上の問題点・悩みなどに会話の幅が広がってきます。これらを1カ月継続しました。次にグループ同士で話し合いをする場をセッティングします。対話をする人数も増えるため、説明の仕方や言葉を選ぶようにもなり会話術も向上します。
リーダー・部下それぞれの準備ができたところで3カ月目にようやく「ピアコーチング」の説明を行います。全員にコーチングのルールを説明し、単なるミーティングではないと理解してもらうところからのスタートです。「ピアコーチング」の進め方としては、3名グループ+リーダーの4名構成で行います。事前に自分が抱えている課題を用意してもらい、自グループ内で相談します。その様子を脇からリーダーがコーチとなり傍聴します。リーダーは時々全員に質問してそれぞれの気づきを促します。部下はその質問をヒントにグループ内で改善案を考えてもらう形です。これを定期的に実施しました。

◆成果
この取り組みを通じて困ったことがあれば相談する習慣が生まれました。そして、単にリーダーに不満や課題を投げかけるのではなく、どのようにすれば解決できるのかのヒントを聞くようになったこと、そのヒントを基にグループ内で話し合って決めるなどの役割と信頼関係が構築されたことも大きな成果でした。

当社では会社の教育風土構築の一環として、コーチング、ピアコーチングのご導入を提案しております。
導入に必要な要件整理、カリキュラム制作、運用管理、コスト管理など導入から運用までをサポート致します。
具体的な導入費用につきましては、別途お見積もりをさせていただきます。
ピアコーチングにご興味をお持ちいただけましたら、是非当社までご用命ください。

パラれる「ピアコーチング」の記事で当社が紹介されました!

株式会社コーナー様が運営されている「パラれる」のピアコーチング記事に当社が監修として参加させていただきました。「ピアコーチング」の概要から活用方法に至るまで、とてもわかりやすくまとめられている記事になっておりますので、ぜひこちらもご一読ください。